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絞殺魔

絞殺魔(1968年)

監督:リチャード・フライシャー

 

1960年代にボストンで実際に起きた連続殺人事件を描いた作品。

実話に基づくことを強調している(ようにみえる)が、係争中に制作されたらしく、どこまで事実なのかはあやしいなあ。それはともかく、すごく印象的な映画でした。

 

前半は、次次起こる事件と、警察が捜査に難航というか迷走している様子が実録タッチで描かれます。オープニングの分割画面?がかっこいいなと思ってたら、その後も分割しまくり。犯行の手口は、主に一人暮らしの女性を訪ね、うまいこと言って家に入り込んで凶行に及ぶというもの。分割画面で扉の内と外を同時にみせるなど、こわ美しい。犯行の見せ方も上品です。だってさすがに公開日考えたら事件から近すぎてどうかと思うもん・・。

 

痴漢、変質者、同性愛者、精神病者など手当たり次第に容疑者候補をあたるんだけど、いっこうに捜査はすすみません。(うしろのふたつと、黒人の被害者がでたくだりは、警察とマスコミの差別を感じます。)しまいには超能力捜査まで!この超能力者のとこけっこうひっぱって、超能力ホンモノ!と思わせといてはずすという・・・。これも事実らしい。このエピソード好き。

 

後半、ついに真打ち登場。観客に先に犯人を知らせてしまいます。なので推理要素はゼロ。というか物証ないんやけど、映画ではもう犯人としてアルバート・デサルヴォ(実名ママらしい)が出てくる。

前半は監視カメラで事件を俯瞰しているみたいだったのが、ここから急に人物視点になります。

デサルヴォは妻子もちのごく普通の男性。いっぽ家を出ると凶悪なボストン・ストラングラーに豹変する。のだけど、なんかようすがおかしい。犯行の最中、鏡を見て逃げ出し、別の家でもヘマをして別件逮捕されます。ようやっと気づいた捜査本部のえらい人ボトムリーさん。いちおう事件の概要を知ってたので、だいぶジリジリさせられたー。ここからが大変、どうやらデサルヴォは二重人格で犯行の記憶がないらしい・・物証ないので自白させる以外にない。でも自覚させたら気いくるてしまうって医者は止める。葛藤しながらも真実を追究するボトムリーさん。

 

司法取引を踏まえての、ボトムリーによるデサルヴォの取り調べ、というか対話がすごい。ここから完全にデサルヴォ移入でせつないったら。自らがボストン・ストラングラーだと自覚するところは圧巻。前衛劇みたい・・真っ白な部屋に白いデスク、白い服白い靴のデサルヴォ。記憶がフラッシュバックしたり、視覚や感覚が狂うさまをまんま体験できるような映像で面白い。被害者の洋服、小物、部屋の配色とか色がきれい。つうかこわいよ・・。

 

正常と異常の境目、自分の本質を知ること、事件のことを越えて身にひきつけてしまう。自分が知っている自分はほんとうに自分なのか?(俺はまだ本気出してないだけってのじゃないよ。)ドバーって血しぶきあがったり、ひたすら襲いくる物理的恐怖と違って、終わりのない根源的な恐怖みたいのを感じました。真の恐怖は己の本質を見つめ続けることかも。(ひとは得体のしれないものを恐れるわけで、知ってしまえば怖くないんかな?でも恐れることがなくなったら楽しくないような気もするな・・とずんずん話が逸れていく)

 

前半と後半のズレとか、なんかキレの悪さはちょと感じますが、それを補って余りある面白さがあると思います。DVDジャケかこいい。