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エンドレス・ワルツ

エンドレス・ワルツ(1995)

監督:若松孝二

 

天才的サックス奏者・阿部薫と元女優で作家の鈴木いづみをモデルにした愛憎ドラマ←コピペ

ふたりの娘の回想風に始まるのと、劇中妊娠したいづみが「この子は作家にするの」と言ってたので、作家になった娘さんが両親のことを書いた本が原作かと思ったら違いました。

実在人物がモデルだとどうしてもエピソードが本当なのかと思ってしまうけど、まあそんなんどっちでもいいや。

 

速度が問題なのだ、という通り、出会ってすぐに激しく惹かれ合い、セックスとクスリと芸術の日々のなかで傷つけ合い愛しあうふたり。とかいうとなんか安っぽくなってしまうな・・。

会ってすぐにいづみのアパートに転がり込み、ライブ全部すっぽかしてセックスだけの毎日、仕事に行こうとするいづみを「君もすっぽかせ」と引き留める薫、まるきりアホやけど「冷めてしまう」というのは分かる気がする。熱を奪って冷たい世界に行きたい、北へ。速くなりたい、音楽も生き方も一貫してる。嫉妬深さも極北。あんなふうに愛されたらそりゃ面白い。

ともかくふたりともエキセントリックなのだけど、鈴木いづみかっこいい・・て中学生みたいに思ってしまった。ラリって自分の足の指を切り落としたりする反面、ちゃんと稼げる原稿を書いて生活を支え(創作や表現も薫と対になって)る。「女は娼婦になれなければあとは母親になるしかない」っていう原稿を薫が隠すくだりもすごくいい。薫が極北ならいづみは両極をいったりきたりできるカンジだろうか。

 

主演の町田町蔵広田玲央名(ふたりとも若!)がお人形のように綺麗でいちいち絵になる。演奏シーンもだいぶかっこいい。(不失者とフェダインのライブもあり。灰野敬二のとこだけ普通のインタビューになってるw)このときの広田玲央名はなんかエヴァ・オーリンみたいですごい好きです。薫が道端でとつぜんいづみを抱き締めて結婚しようてはしゃぐあたり(というかほうぼうのシーンが)フランス映画みたいでオーセンティックにかわいい。

 

結婚してから薫はいづみを殴る(てか殴り合う)ようになり、首締めたり妊娠してても蹴ったりするのだが、陰惨さが全然なくてなんというか、猫が本気の喧嘩してるみたいだった。暴力表現が軽いってことではなくて「わたしに本気でつきあってくれるのはこのひとだけ」ってことなんだろう。反体制運動とか、デリダセリーヌとか、芸術論戦わせたり時代は70年代なんやけど、あの時代にわたしが勝手に抱いてるイメージ・湿度みたいのはあんまりなかったなあ。(DVDシリーズタイトルの「あの頃映画」ってまさにそういうカンジやな。)「夜の果てへの旅」再読したくなった。どうでもいいけど町田康の朗読いいなあ。。

 

薫は自殺に近い事故死、7年後(?)、いづみも自殺。自殺を美化するようなのはあんまり好きじゃないけど、人生の総量が決まっているのは仕方ないのかもしれない。細く長くか太く短く。多くの人間がやれる生き方ではなく異端ではある。(何が正常かって話も出てくる。)薫はとてつもなくストイックで、いづみは自分を大切にしていたんだと思う。表面的な劇的要素(才能と才能、職業、時代とか・・)をさっぴいても、ふたりが出会ったことはどうしようもなくロマンチックに思える。