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デザートフラワー

ソマリア出身のスーパーモデル、ワリス・ディリーの伝記映画。デザート・フラワーとはワリスの名前が意味する砂漠の花。

映画公式サイト→http://www.espace-sarou.co.jp/desert/index_B.html

 

彼女は5才のときFGM(女性器切除)を施され、苦痛を味わう。映画では3才ってなってたけど、公式サイトに5才て書いてあった。著書は読んでないのでわかりません。

 

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FGM→思春期までの女児の外性器を切り取る(または女性性器の一部に傷をつける)社会的慣習。アフリカ、中東、アジアなどの一部の開発途上国で現在も行われている。貞操、純潔の象徴とされるが、切除により、性交や出産時に痛みと潜在的危険を伴うようになり、また、性感染症に感染する危険も増加するため、弊害は大きい。 (国連人口基金東京事務所-用語集より)

wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E5%99%A8%E5%88%87%E9%99%A4#.E4.BA.8B.E4.BB.B6

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13才のとき、老人と結婚(お金と引き換えに4番目の妻だったかな)させられるのを嫌がり、一人で砂漠の中を逃げ出す。単身ロンドンへ渡り、苦労を重ね働くうち、有名カメラマンに見出されモデルになる。・・て、こんな簡単に書いて済むような内容じゃないけども。

 

FGMについて詳しくは知らなかったけれど、アフリカを中心に女児の性器を切除する風習があるというのはいちおう知っていた。じっさい映画として、ドキュメンタリーではないドラマで見たら、もっと迫るものがあった。とくに幼いワリスを母親が押さえつけて、部族の女性が施術するシーン。。もちろん母親がひどいという意味ではなく、それが「当たり前」であるという世界があまりにつらい。男尊女卑の最たる悪習。。纏足もそうだよね。。

 

身体的に害があるのは当然として、このことがロンドンでトップモデルとなったあとも、ワリスの人生に大きく影響を及ぼし続ける。ワリスは男性を恐れ、心を閉ざし続ける。性器切除だけではなく、縫い閉じられている(!新婚初夜に夫が開く・・・)ことによって、激しい痛みに襲われ病院に行く。彼女はまだ英語がよく話せないため、医師はアフリカ人の看護師男性を呼び、彼女に手術をすすめる。ところがその男性は医師の言葉を伝えず、「おまえは祖国の伝統をないがしろにする気か、恥知らずめ!」みたいな罵声を浴びせるのだった・・。

 

ワリスが自分の体験を世間に公表したことで、FGMは世界に知られ、廃絶運動が起こる。が、現在でも一日6000人の少女がFGMを行われているそうな。。

 

どうしてもFGMの衝撃が先にきてしまうが、映画としてもよく出来ていて、とくにロンドンでワリスを助けてくれる親友マリリン(サリー・ホーキンス)がとてもキュートで、物語に救いを与えてくれている。それにやっぱりワリスがどんどん綺麗になっていくところ(外見だけではなく、自分を解放していくところ)を見るのは楽しい。と言っても、主演のリヤ・ケベデ最初からむっちゃ綺麗なんですけど。。そしてアフリカの大地が美しい。

 

これは遠い世界の関係ない出来ごととは思えない。大なり小なり、女性が女性に生れた瞬間から背負うことと関連していると思う。程度の差こそあれ、日本でも男尊女卑は相変わらずあるし(そのことによって男性にとっての苦悩もあると思う)女性たちはやっぱり自分を解放出来ない人が多い。それどころか、自分が束縛されていることに気づいていない人も多くいるのではないかな。FGMの廃絶にあたり、女性自身の意識改革がまず重要である、というのと同じように。

 

世界には貧困や戦争や様々なことで苦しんでいる人々が大勢いる。私は平和で豊かな日本に生まれてよかった、というかありがたいという気持ちはあるけど、なんかそれは違うように思う。アフリカだろうとヨーロッパだろうと日本だろうと、みんな自分で選んで生まれてきたわけではないのだ。(実はそれは選んできたということでもあるのかもしれないが、それは別項にゆずる。)

 

このFGMもそうだけど、それを知って何か運動しようとかそういう気持ちはない。もちろん早く廃絶されてほしいとは強く願う。それは自分が何か役立てるとは到底思えないというのもあるが、私は私の平凡な生活をたゆまずに続けることが私のやることだと思うから。それじゃあ自分のことだけ考えて、社会や人の役に立たないみたいだけど、私には思い出したようにときおり募金したり、知ることや考えることしか出来ない。見て知って考えて、どうしようもなく突き動かされるようなことがあって、それが結果的に誰かの役に立つことであればいいなとは思うのだけど。。うまく言えないけど、この映画をみて簡単に「心がふるえました」なんて言うのはイヤなんだ。そりゃ違うだろ。。どういうことかっていうと、ワリス本人のインタビューで、「この映画を見た日本の観客はどんな印象を受けると思いますか?」という質問に「アフリカに住みたいと思うんじゃないかしら」って答えるワリスの笑顔は最高にすてきで、その答えを言っているように思う。