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キッズ・オールライト

THE KIDS ARE ALL RIGHT(2010)

監督:リサ・チョロデンコ

 

(オリジナルバージョン)と盤面に表記があったけど、劇場は違ったのかな?

 

南カリフォルニアに暮らすある一家。大学進学を控えた長女ジョニ、思春期を迎えた長男レイザーとその両親、医者のニックと専業主婦(?)のジュールス。ごく普通の中流家庭・・・ただしニックとジュールスは二人ともママ。レズビアンのカップルが精子提供を受けて、ひとりずつ子どもを産んだ家族なのだ。ある日、子どもたちは遺伝子学上の父親であるポールに会いに行く。

 

とこのへんまでは予告やテレビスポットでガンガン流れてたので折り込み済み。

オープニング、スケボーで疾走する少年二人、ちょっとイカレたほうの子の家で、その子と父親がじゃれ合う様子を、なんとも言えない微妙な表情で見つめるもう一人の男の子。ここで、あーこの子が主役家族のひとりかって分かる。父親がいないんだろうなって。

 

この調子で、絶妙な間とか表情で、登場人物の心情がガシガシ伝わってくる。無駄な顔のアップなんか一切なく、すごく良く出来てると思った。

 

両親がゲイカップルであるということに関して、ふたりの子どもたちはまったく気にしていない、もしくは、その問題はすでにクリアした後の話、ということかもしれないが、わざわざゲイにした必然性はあまり感じられない気もする。それとも、そういう世の中になればいいという願いが込められているのかな。

 

ゲイカップルの家族という設定だけを取り上げて、「新しい家族のカタチ」なんてコピーがついてたけども、話はまったくもって新しくない。ちょうオールドスクールな家族の崩壊と再生やないか。(そこが良いと思う。)

 

ディテールだけを取り上げるなら、ゲイならではのギャグみたいなんはいっぱいある。たとえば、ニックとジュールスが男同士のポルノを観ていることを知ったレイザーがその理由を尋ねるとか。その答えがまた面白くて、この映画自体のことを云ってる自虐ネタともとれる。

 

医者のニック(ベリーショート・厳格な子育て方針・酒飲みで人づきあいにやや難あり)が家計を支え、パートナーのジュールス(ロングヘア・大らかな性格、悪く云えばだらしない・仕事はうまくいかないんで劣等感あり)が専業主婦、そこへ闖入してきた精子提供者のポール。気ままに生きてきた独身男、気さくで軽くてあっという間に子どもたちとジュールスの心を掴む。レイザーは冷静だけど、カマトトのジョニはすぐに落ちた。。

 

「ニックは私を認めてくれない!」なんつって劣等感でいじいじのジュールスは、ここぞとばかり、ちょっとセクシーでヤサ男のポールと浮気してしまう。こうなるのも、ポールとママ二人が対面するところ、ジュールスの目つきでわかっちゃうのがすごい。

 

ポールには気軽な関係の彼女(フォクシーな黒人美女)もいるのだが、かわいい子どもたちと天然ジュールスに本気で入れあげる。そんな関係はあっという間にニックの知るところとなり、幸か不幸か子どもたちも知ってしまい、一見うまくいきそうだった一家とポールの関係は崩壊する。

 

家族4人とポール、それぞれがこのひと夏を通して変化する。ニックとジュールスは夫婦関係の見直しと子離れを、ジョニは性的(?)な成長と自立を、レイザーも精神的な成長を、ポールは自分の為だけに生きてきた人生から、家族を持ちたいと願うようになる。

 

大人たちはみんなそれぞれ問題を抱えてダメなところがあり、同時にそれぞれが良いところも持っている。完璧主義でかんしゃく持ちのニックは、家族に深い愛情があるし、好きな音楽の話に夢中になって歌い出すお茶目なところもある。ちょっとだらしなくてモラトリアム感の抜けないジュールスは、ニックや子どもたちを丸ごと受け入れる器を持っている。いい加減そうに見えるポールだって独自の哲学を持っていて、ジョニに示唆に富んだアドバイスをしたりする。

 

どっかで見かけたレビューで、タイトルに反して子どもたちにとって全然良くないのでは?と書いてあったけど、そんなことはないと思う。大人だろうと親だろうと完璧な人間になんてなれないし、なる必要もない。レイザーが初めてポールに会った感想をジョニに訊かれ、「まあまあ(All right)」と答えるのだが、それでいいのだと思う。ラストのジョニのハグと、レイザーのひと言がそれを物語っている。

 

ジョニが大学入学のため家を出る前日、関係を修復しようとポールが訪ねてくる。「また会える?」と訊く彼に向かって、ジョニは分からないと答え、怒り心頭のニックは、「あんたは侵入者なのよ!家族が欲しけりゃ自分で作りなさい!」と追い返す。レイザーとジュールスに至っては無視。。。

 

浮気したジュールスよりもポールにキレるあたり、やっぱニックは女だなと思う。正論過ぎて酷い。ポールかわいそう過ぎる・・・。多少の薄っぺらさはあるものの、精子提供しただけの子どもたちに惜しみなく愛情を注ぎ、ジュールスのことも本気になってフォクシー美女と別れるんやでえ。殆ど巻き込まれた形やのに、すっかり悪人扱い。完全に噛ませ犬ポジション。おいら性格的にはニックタイプだけど、現実にはポールにいちばん感情移入。。。まあでも、ポールならすぐにフォクシー美女とヨリを戻すか、農園のエロい姉ちゃんに慰めてもらえるだろうから心配ないか。

 

しかしこれ、精子提供じゃなく母体提供だったら、また違う話になるんだろうな。なんかそういう映画もあったような気がする。なんやったかなあ。

 

あと良かったのは、セックスシーンが間抜けで楽しそうなところ。こういうモンだよな、、客観的に観ると滑稽で、でも楽しいんだよな、と思う。音楽も良かった。ジョニの名前の由来もね。